オレンジ姫の物語

おれんじ姫の物語【第四話】

■□オレンジ姫の物語□■

ペパーミントに続いて中に入ると、そこはこじんまりとしたカフェ風の佇まい。

窓やドアは2重になっており、中は吹きさらしの潮風から良く守られているようです。

「よくきましたね、さあお座りください」オパールが皆を招き入れました。

その後ろからジュリーが入ってきました「姉さん、カヌーは浜辺に準備したわ、月も出ているし

波はとても穏やかよ、この様子ならお城まではそんなにかからないわ」

「あの崖を降りてきたの?、二人とも、運動神経が良いって噂は本当だったのね」オパールはそ

う言いながらバロン、ペパーミント、ジンジャーにミルクを差し出しました。

もちろん、オレンジ姫ににも気遣いを忘れません。

「初めましてお姫様、私はオパール、こっちは妹のジュリー、こんな小さな家を見るのは初めて

でしょう、よくここまでがんばりましたね、ミルクは飲めますか?」

姉妹とも、素朴で優しい子たちのようです。

少し熱めのミルクをふぅふぅさせて、オレンジ姫はコクンコクンと喉を鳴らしながら飲み干しま

した。

ゴツゴツしたカップを不器用な手つきでテーブルに置くと、オレンジ姫は考えました。
ビックリしどおしで怖い思いもしたけれど、全てが初体験だった一晩の出来事が、ひとつづつ頭

の中によみがえってきました。

ジンジャーはもう、いつもの優しい目つきに戻っていました。

おれんじ姫の物語【第三話】

■□オレンジ姫の物語□■

・-*-*-*-*-*-・
前回までのあらすじ
・-*-*-*-*-*-・

洋風店を経営しているあらいぐまのマダムニコールのお店までついてきてしまった、オレンジ姫!
木の陰に隠れていましたが見つかってしまいました。
ペパーミントとジンジャーは大慌て!このとこがオレンジ王国の王様に
見つかってしまったら大変です!
夜が明ける前に、オレンジ姫をお城に送り届けねばなりません。
マダムニコールのとっさにひねり出したアイデアをみんなに提案します。

┼───────┼
☆  第3話  ☆
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オレンジ姫は部屋の隅でコチコチに固まっていました。

ただ好奇心が過ぎただけの行動が、とんでもない問題を引き起こしそうに
なっているのです。

行き場のない表情をしたオレンジ姫を見て、マダム二コールが優しく声をかけました。

「お姫様、もうこんなことをしてはだめですよ」

マダムニコールの意外な優しい言葉に、

緊張の糸が一気にほぐれ、オレンジ姫の目から涙がぽろぽろこぼれはじめました。

「ごめんなさい・・・わたし・・・」そう言いかけたオレンジ姫に

「あらあらあら、可愛いお顔が台無し、さあさ、涙をおふきなさい」

涙でびしょびしょのほっぺたを拭いながら、

「そう、みんなお姫様の味方ですよ。

いつも感謝を忘れないお気持ちが大切です。もう分かりましたね」

マダムニコールは、うなずくオレンジ姫を軽く抱きしめてから、
ペパーミントとジンジャーに言いました。

「さあ!そろそろ出発だよ!、支度はいいかい?」

漆黒の闇の中を一つのランプと6つの目が光ります。

先を走るのはペパーミント、その後を追うのはオレンジ姫を背負ったジンジャー。

二人の目つきはお城でみる優しい目ではありませんでした、

初めてみた二人の表情に何も言えないオレンジ姫。

うっそうと茂る森の中、縦横無尽に伸びる枝葉
とあちこちに飛び出す岩を見事にかわし、3人は進みます。

「大丈夫?ジンジャー?」それでもオレンジ姫は
ジンジャーを気遣って声をかけました。

「ええ、平気ですよ、お姫様こそ大丈夫ですか?」

「ええ・・・でも・・腕がしびれてきそう・・」

オレンジ姫が言いかけたとき、視界が急に開けました。

月に照らし出されたそこは、海を見下ろす崖の上です。

「早かったな、おいらも今来たところだ!」空からバロンの声がしました。

「ここからちょっと大変だけど、あと少しの辛抱だからね!」

「ああわかってる」ペパーミントもジンジャーももう泣き言はいいませんでした。

事態を打開できるのは、もう、自分たちしかいないのですから。

前にいたペパーミントがランプの明かりを消したかと思うと、

オレンジ姫の視界から、フッと見えなくなりました。

あっと思った瞬間、ペパーミントが声をかけました。

「お姫様!、しっかり私の背中につかまっていてくださいね!」

ジンジャーが叫んだかと思うと、滝から落ちるようにポーンと崖の上から急降下。

崖の出っ張った岩や、生えている木の枝に巧みに飛び移りながら、

ペパーミントと姫を背負ったジンジャーは下へ下へと降りてゆきます。

「ビリッ、ビリッ!」ドレスの裾がゴツゴツした岩肌や木の枝に擦れて
裂ける音がします。

オレンジ姫はもう怖くて目を開けられず、ジンジャーにしがみついていました。

再び目を開けたときには、もう平らな道。バロンとペパーミントが前方にみえます。

その先に明かりの点いている小屋が見えました。

ザァー ザザァー

さざ波の音が聞こえてきました。

暗闇の中にまあるい光がぼんやりと輝いてます。

どうやらあれがオパールとジュリーの家のようです。

***つづく***

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おれんじ姫の物語【第二話】

■□オレンジ姫の物語□■

・-*-*-*-*-*-・
前回までのあらすじ
・-*-*-*-*-*-・

広いお城の中で退屈でたまらなかったオレンジ姫。
偶然にペパーミントとジンジャーのヒソヒソ話を聞いてしまいました。
どうやら、お城の外の“どこか”に行く予定のよう・・・
気持ちが踊るようにワクワクしてきて、
こっそりペパーミントとジンジャーについて行ってしまったオレンジ姫!
王様はもちろん、お世話係のキコンやテラミスも知りません。

着いた先はペパーミントとジンジャーの生まれ故郷、ジュークボルドーの森。
もちろん、オレンジ姫には初めての場所です。
この森には、魔法の国への入口があるといわれています。

サラサラサラサラ・・・澄んだ小川のせせらぎが聞こえてきます。
ギーキコン、ギーキコン、水車の回る音がしてきます。

窓の隙間から外を見ると、ペパーミントとジンジャーがランプを手に
小道を歩いて行くのが見えます。

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☆  第2話  ☆
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おれんじ姫の物語【第二話】

ペパーミントとジンジャーの向かった先は、あらいぐまのマダムニコールのお店。
森で長年、洋服屋を切り盛りしています。

先を歩いていたペパーミントが、重そうな木の扉をノックしました。
「かぎは開いているよ」中から声がしました。

「こんばんわ、マダム」ペパーミントとジンジャーは中に入ります。

「よく来たね」

二人を招きいれながら、勘の鋭いマダムは木の影に隠れていたオレンジ姫に
気がつきました。

「あらぁ?・・・今夜は小さなお客様を連れてきたのね」

見つかってしまったショックで心臓が飛び出しそうになっているオレンジ姫に、
マダムは優しく声をかけました。

「入って座りなさいな、お嬢ちゃん」

「かわいい子だね、でもこの辺じゃ見かけない!よそ者だぞ!」
吹き抜けの天井の梁の上に留まっていたこま鳥のバロンが、
羽をバタバタさせて叫びました。

それより一番ビックリしたのは、ペパーミントとジンジャーです。

「お姫さまぁ・・・!」

二人とも、震える声と顔を見合わせ、ため息をつきました。
しかし、その先の言葉が出てきません。

暫らくするとようやく二人も事態を飲み込めてきました。
いつの間について来たのだろう!?・・・
少しも気がつかなかった!!!
すぐにお城に連れて帰らなくては!

お姫様がいないことが知れれば、お城はさぞや大騒ぎになるだろう。
ペパーミントの頭の中をいろんな事が駆け巡り、困惑の気持ちが隠せません。
まだ状況を把握しきれない様子で、キョトキョトしているオレンジ姫。
そんな様子を、ジンジャーが恨めしそうに見つめています。

「どうしよう・・・朝の見回りにお姫さまがいない事が知れたりしたら・・・」
パパーミントが泣きそうな声でつぶやきました。

「お姫様?・・・?・・ええ-っ!その子がオレンジ城の王女様なのかね!」
マダムニコールは思わず大声で叫んでしまいました。

「どうしようったってあんた!・・・そうだ!、うさぎのオパールとジュリーに
頼むことにしよう!
今から馬車で戻っても間に合わないけれど、舟で行けばまだ間に合う、
あんたの言っていた見回り時間までには着くだろうよ」

「ジンジャー、あんたは強くて速い足もある、お姫様を背負って浜辺までお行き!
そこからはオパールとジュリーの姉妹がお城まで案内してくれるよ」

「浜辺って・・・港町の手前の?・・・あの森の向こうの切り立った崖を
降りたところの白い砂浜かい?
こんな夜中に?、あの辺りはよく知らないんだよぉ!・・・それに、
魔女が出てくるかもしれない」

普段、口ではいろいろ言うジンジャーですが、気が小さくて怖がりです。
そんなジンジャーを諭すようにマダムにコールは言いました。

「あんただって多少は魔法が使えるんだろう?大丈夫さ!」

「ペパーミント!、あんたは詳しいはずだね」

「あ、ええ、多分・・・大丈夫・・・」

「しっかりおし!」

ショックのあまり頭をかかえていたペパーミントをマダムニコールが叱りました。

「いいかい!、起きてしまった事は仕方がない、あんたたちはお姫様を安全に
お城に戻すことだけを考えるんだ!」

その一言でペパーミントもジンジャーにも目の色が戻りました、
どうやら覚悟ができたようです。

「森の出口からはバロンに案内させるよ、バロン、先にオパールのところ行って
話をつけておいで!
あんたが森の出口に戻る頃合いに三人も着くだろうよ」

「わかった!」

吹き抜けの天窓を開けて、バロンが空高く舞い上がりました。

彼がいちばん冷静です。マダムニコールとも、あ・うんの呼吸。
マダムニコールがいちばん信頼をおいているのは、そう、このバロンなのです。

***つづく***

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おれんじ姫の物語【第一話】

■□オレンジ姫の物語 その1□■

おれんじ姫の物語【第一話】

きらきら光るサファイアブルーの海。
その岸壁に立つオレンジ城は、いつ頃からあるのか誰もその由来を知りません。
まだ小さななオレンジ姫にとって、そこはまるで迷路のようです。
急な階段をクルクル登って、お城の塔から顔を出せば、彼方まで広がる海と緑の森。
海や森と、空の境界線の向こうには何があるのだろう???
オレンジ姫にとって世界はあまりにも大きすぎて、ワクワクしてきます。

反対側の窓から下を見下ろすと場内の広場がみえます。
高い塔に阻まれて、午前中はお日さまが当たらないため
いつもは人がいないのですが、今日は違います。

城内ではみんなの動きが慌しくなってきているようです。
年に一度のお祭りが近づいているからでしょうか?

その中でひときわ目立つのは、お洒落でおすましのお姉さま、猫のペパ-ミントと、
ちょっと男っぽいけれど、スマートで働き者の狐のジンジャー。
この釣り合いの取れたコンビは周りの憧れの的です。

広いお城の中、退屈でたまらないオレンジ姫。

広場にでてウロウロしていると、壁の後ろ側から”ひそひそ話”が聞こえてきました。

それは衣装係のペパーミントとジンジャー。

今度開かれる宮廷ダンスパーティーの打ち合わせのようでしたが・・・。

スィートでエレガントな身のこなし、ちょっと意地悪だけどなぜな憎めない
シャム猫のペパーミント。

いつもテキパキと動く働き者、歯に衣着せぬ言葉が鼻につくけど、
いつもみんなの事を考えている心優しい狐のジンジャー。
彼女たちのスタイリストとしてのアイデアの源は、どうやらお城の外の
別のところにあるようです。

・・・え?・・・なになに?

明日、みんなに内緒でお城の外で出かけるって??

どこへ行くの?

どうやら二人だけで秘密にしている場所があるようです。
まだ誰も知らない秘密の場所。
オレンジ姫はワクワクしてきました。

退屈なお城から抜け出せる!

オレンジ姫は、コッソリあとをついて行こうと考えました。

それからしばらく時間が経って・・・。

闇夜にまぎれて秘密の出口からお城をスルリと抜け出したペパーミントとジンジャー。
二人はお城の裏の森の中へ入ってゆきます。
その後をチョコチョコと追いかけるオレンジ姫。

しばらく歩くと、ペパーミントの持つランプの先に馬車が照らし出されました。

「遅くなってしまう、早速出かけよう」
二人が馬の準備をしている隙に、オレンジ姫はこっそり馬車の中にもぐりこみました。

ジンジャーが馬車の中に入ってきましたが、
荷物の陰に隠れたオレンジ姫には気付きませんでした。

「それじゃぁ行くよ」外でペパーミントの声がすると、馬車は静かに出発しました。

どれくらい走ったのでしょうか、オレンジ姫が目覚めたとき、
馬車はいつのまにか止っていて、ジンジャーの姿もありませんでした。

馬車の中で眠ってしまったオレンジ姫は、そーっと外の様子を窺いました。

着いた先はペパーミントとジンジャーの生まれ故郷、ジュークボルドーの森。
もちろん、オレンジ姫には初めての場所です。
この森には、魔法の国への入口があるといわれています。

サラサラサラサラ・・・澄んだ小川のせせらぎが聞こえてきます。
ギーキコン、ギーキコン、水車の回る音がしてきます。

窓の隙間から外を見ると、ペパーミントとジンジャーが
ランプを手に小道を歩いて行くのが見えます。

オレンジ姫は馬車の扉を静かに開けて、気付かれないように二人の後を
チョコチョコついて行きました。

さてさて!★★オレンジ姫の物語★★今ちっちゃなオレンジ姫のちいさなボウケン・・その行方は・・?

つづく

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おれんじ姫の物語第2話>>

おれんじ姫の物語

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