■□オレンジ姫の物語□■
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前回までのあらすじ
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広いお城の中で退屈でたまらなかったオレンジ姫。
偶然にペパーミントとジンジャーのヒソヒソ話を聞いてしまいました。
どうやら、お城の外の“どこか”に行く予定のよう・・・
気持ちが踊るようにワクワクしてきて、
こっそりペパーミントとジンジャーについて行ってしまったオレンジ姫!
王様はもちろん、お世話係のキコンやテラミスも知りません。
着いた先はペパーミントとジンジャーの生まれ故郷、ジュークボルドーの森。
もちろん、オレンジ姫には初めての場所です。
この森には、魔法の国への入口があるといわれています。
サラサラサラサラ・・・澄んだ小川のせせらぎが聞こえてきます。
ギーキコン、ギーキコン、水車の回る音がしてきます。
窓の隙間から外を見ると、ペパーミントとジンジャーがランプを手に
小道を歩いて行くのが見えます。
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☆ 第2話 ☆
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ペパーミントとジンジャーの向かった先は、あらいぐまのマダムニコールのお店。
森で長年、洋服屋を切り盛りしています。
先を歩いていたペパーミントが、重そうな木の扉をノックしました。
「かぎは開いているよ」中から声がしました。
「こんばんわ、マダム」ペパーミントとジンジャーは中に入ります。
「よく来たね」
二人を招きいれながら、勘の鋭いマダムは木の影に隠れていたオレンジ姫に
気がつきました。
「あらぁ?・・・今夜は小さなお客様を連れてきたのね」
見つかってしまったショックで心臓が飛び出しそうになっているオレンジ姫に、
マダムは優しく声をかけました。
「入って座りなさいな、お嬢ちゃん」
「かわいい子だね、でもこの辺じゃ見かけない!よそ者だぞ!」
吹き抜けの天井の梁の上に留まっていたこま鳥のバロンが、
羽をバタバタさせて叫びました。
それより一番ビックリしたのは、ペパーミントとジンジャーです。
「お姫さまぁ・・・!」
二人とも、震える声と顔を見合わせ、ため息をつきました。
しかし、その先の言葉が出てきません。
暫らくするとようやく二人も事態を飲み込めてきました。
いつの間について来たのだろう!?・・・
少しも気がつかなかった!!!
すぐにお城に連れて帰らなくては!
お姫様がいないことが知れれば、お城はさぞや大騒ぎになるだろう。
ペパーミントの頭の中をいろんな事が駆け巡り、困惑の気持ちが隠せません。
まだ状況を把握しきれない様子で、キョトキョトしているオレンジ姫。
そんな様子を、ジンジャーが恨めしそうに見つめています。
「どうしよう・・・朝の見回りにお姫さまがいない事が知れたりしたら・・・」
パパーミントが泣きそうな声でつぶやきました。
「お姫様?・・・?・・ええ-っ!その子がオレンジ城の王女様なのかね!」
マダムニコールは思わず大声で叫んでしまいました。
「どうしようったってあんた!・・・そうだ!、うさぎのオパールとジュリーに
頼むことにしよう!
今から馬車で戻っても間に合わないけれど、舟で行けばまだ間に合う、
あんたの言っていた見回り時間までには着くだろうよ」
「ジンジャー、あんたは強くて速い足もある、お姫様を背負って浜辺までお行き!
そこからはオパールとジュリーの姉妹がお城まで案内してくれるよ」
「浜辺って・・・港町の手前の?・・・あの森の向こうの切り立った崖を
降りたところの白い砂浜かい?
こんな夜中に?、あの辺りはよく知らないんだよぉ!・・・それに、
魔女が出てくるかもしれない」
普段、口ではいろいろ言うジンジャーですが、気が小さくて怖がりです。
そんなジンジャーを諭すようにマダムにコールは言いました。
「あんただって多少は魔法が使えるんだろう?大丈夫さ!」
「ペパーミント!、あんたは詳しいはずだね」
「あ、ええ、多分・・・大丈夫・・・」
「しっかりおし!」
ショックのあまり頭をかかえていたペパーミントをマダムニコールが叱りました。
「いいかい!、起きてしまった事は仕方がない、あんたたちはお姫様を安全に
お城に戻すことだけを考えるんだ!」
その一言でペパーミントもジンジャーにも目の色が戻りました、
どうやら覚悟ができたようです。
「森の出口からはバロンに案内させるよ、バロン、先にオパールのところ行って
話をつけておいで!
あんたが森の出口に戻る頃合いに三人も着くだろうよ」
「わかった!」
吹き抜けの天窓を開けて、バロンが空高く舞い上がりました。
彼がいちばん冷静です。マダムニコールとも、あ・うんの呼吸。
マダムニコールがいちばん信頼をおいているのは、そう、このバロンなのです。
***つづく***