茶色系

2021/09/14

唐茶色(からちゃいろ)
浅く赤みのかかった、くすんだ茶色。江戸時代も初期、中国では明から清に王朝が移行する時代でした。この頃、中国渡来品または、中国風の物には「唐」の文字を付ける傾向がありました。唐からの渡来品というと、「新しい」、「美しい」と言う意味あいも含まれており、唐茶色は当時の旬の色だったことが推測されます。当時の粋な流行色名には、掛け言葉、洒落、語呂合わせ、当て字、読み替えなど、言葉遊びが多く、一般庶民の風俗、ユーモアなどが感じられます。蘇芳に茶の茎や葉の煎汁で染めて色をだしたと思われます。

煤竹色(すすたけいろ)
煤けた竹の色に似た、やや黄色味がかった暗い茶色を言います。天井や屋根裏など煤払いをするのに、先に枝葉のついた竹を用いました。
この煤竹に似た色を煤竹色と呼びます。庶民の暮らしから出た名前で、江戸時代前期に流行しました。煤竹色より明るい色を「銀煤竹」、緑がかったものを「柳煤竹」、藤色がかった煤竹色を藤煤竹(ふじすすたけ)、と呼びました。着物の裏地としても良く使われた色です。

朽葉色(くちばいろ)
朽ちた落ち葉の色に似た褐色の、黄橙色に近い色。しかし「朽葉四十八色」と言われるほど色数も豊かで古代より親しまれていた色名であると思われます。平安朝の「もののあわれ」の美意識の中核をなす色名のようです。朽葉色系の名前としては、他に「赤朽葉色」、「黄朽葉色」、「青朽葉色」等があります。
似た色名に「枯色」(黄褐色)という言葉がありますが、それとはまた違って、秋特有の哀愁漂う色名です。

金茶(きんちゃ)
レモンティーのラペルに使われるような浅く黄色味がかった茶色で、黄金のような黄褐色を言います。派手な色ではありませんが、絹の光沢が合わさると、華やかで明るい印象の色になります。日本の織を代表する黄八丈刈安の灰汁媒染、沖縄の首里絣にこの色が品良く効果的に使われています。また帯の色としても良く使われ、中でも金糸使いのように見せかけ、金茶色を織り込んで重厚感を持たせた帯をみかけます。金糸、箔使いの帯よりも、やや落ちいた渋めではありますが、コーディネートしやすくお着物全体を、華やかに見せてくれるようです。

蒲色(かばいろ)
水草の蒲の穂に似た褐色味の橙色を言う。「樺色」とも書く。

弁柄色(べんがらいろ)
顔料の「紅柄」の色に因んだ、濃い赤みの褐色。顔料の土中の鉄分が酸化して赤くなった部分から作られた色。古代は朱と混用されました。洞窟壁画や町家の格子などによく見られ、特に江戸時代には天然の弁柄色の赤土を壁に塗り込んだ建物が盛んに作られるようになりました。ベンガラとはインド東部のベンガルに由来する当て字で、戦国時代末~江戸時代にかけてこの呼び名が入ってきました。江戸時代になると国産の弁柄が作り出せるようになり、鉄丹呼ばれました。弁柄は「紅殻」とも書きます。

憲法染(けんぽうぞめ)
剣豪吉岡憲法の創案した黒茶色。江戸時代初期の兵法師範吉岡憲法が明人の法を伝えたとされる黒茶染を言います。この一門は宮本武蔵に敗れることとなりますが、江戸時代は染めの匠として、京都西洞院四条に工房がありました。個人名を立てたブランド色としては日本では初の発想かもしれません。「吉岡染」とも呼ばれ、江戸時代を通じて小紋の地色などに用いられるなど広く知れ渡っていたようです。楊梅の鉄発色。今はもはや使われない色名ですが、こんにちでも言葉に強いインパクトが感じられ、当時一世風靡した時代の感性の良さがうかがわれます。

檜皮色(ひはだいろ)
檜の皮の色のような赤褐色を言う。

芝色(しばいろ)
奈良時代の文献に見られる古い染料で、栗、檪、樫などの材木に含まれるタンニン酸で染めた茶色をさしている。

阿仙色(あせんいろ)
インド亜熱帯に生息する豆科の植物。タンニン酸が主成分で濃い茶色が得られる。奈良時代から輸入、染料と生薬に。

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